愛犬エッセイ  シャーマンブルドッグ レオナルド・フィッシャー  尾島恵子[訳] 読売新聞社


勝手気ままでガンコなブルドッグ「ファッチャベロ」との9年間の思い出を、医師(人の)の著者が語っています。
車とぶつかって大ケガをしたり病気の治療のために、動物病院にしょっちゅう通院していたことや、離婚など自身の悩みなどがファッチャベロのおかげでどんなに救われたかが愛情深く描かれています。

全体的に愛犬エッセイのようで、それでいて哲学的な話にも展開する、一風変わったエッセイです。



ミステリー小説 バセンジーは哀しみの犬 キャロル・リーア・ベンジャミン 阿部里美[訳]創元推理文庫


元ドッグトレーナーという経歴の探偵が、愛犬ダシール(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)とともに事件に巻き込まれます。
マグリットというバセンジーが事件の鍵をにぎります。
タイトルのイメージほどは重い内容でもなくて、犬の様々な世界もくわしく描かれているので、推理ものとしても犬業界ものとしても読めるようになっています。



小説 
ベルカ、吠えないのか? 古川日出男 文春文庫


戦時中に、キスカ島という島にとり残された4頭の軍用犬と、その子孫たちの運命をたどる物語。

全編が犬目線からの話なのが珍しく、登場する人たちはすべて肩書きだけで名前なし、という徹底ぶり。
戦争中の話で殺伐とはしますが、犬中心で語られるので不思議な読み心地だと思います。



ミステリー小説 愛犬をつれた名探偵 リンダ・O・ジョンストン 片山奈緒美[訳] ランダムハウス講談社


ある事情で、女性弁護士からペットシッターになったケンドラが、事件に巻き込まれていきます。
ところどころで、シッター先の犬たち猫たち、その他ペット動物が登場してきます。
明るいテンポで、肩のこらない読みごこち。



小説 
老人と犬 RED ジャック・ケッチャム [訳]金子浩 扶桑社ミステリー


動物愛護とサスペンスがミックスされたようなストーリーです。
老人の愛犬レッドが、見ず知らずの少年によって理不尽にも死なされてしまいます。
老人は、少年を捜しだして謝罪を求めようとしますが、少年の父親が街の有力者で徹底的にかばって死なせたこと自体をなかったことにしようとします。
老人はしかたなく法に、そしてマスコミに訴えますが・・・。
少年の父親は逆上して老人に嫌がらせをする始末。
人ではなく犬が相手の事件のために、なかなか思うように助けも得られず、少年の謝罪どころか認めさせることすらできない、ちょっと犬好きには身につまされるところもある展開になっています。
それでも、もちろん最後は逆転、明るくなれますからご安心を。




フォトブック 
障害犬タローの毎日-すべての脚を失った捨て犬の涙と笑いの11年- 
佐々木ゆり[文]三島正[写真] アスペクト



保健所での処分、難病、安楽死と、何度もおとずれた命の危機を乗り越えながら、元気に生きたタローの取材レポートです。
お寺の境内にダンボール箱に捨てられていたタローが、里親になったおじいさんに引き取られたものの、原因不明の血行障害の病気にかかってしまいます。
四つ足をすべて切断する大手術でなんとか一命を取り留めることができたけれど、高齢のおじいさんには世話が難しくなってしまい、最終的に動物病院で引き取られることになります。
やがて義足を試してみてうまくいかなかったり学校に特別授業に招かれたりと、タローがいることでおきる様々な出来事がとても明るく書かれています。
そのタローだからおきる一つ一つのエピソードが新鮮で、陽気ながら嫌なことははっきり嫌がる態度をとるタローの性格がまたどこか人間くさくて楽しい。
犬が好き嫌い関係なく、足がなくてもありのままに受け入れて生きるタローに、きっと元気がもらえると思いますよ。



ハートウォーミング小説 
いぬのメリー -幸せを運ぶ伝書犬- 栗原美和子 リンダブックス


事情から母親と別れて児童養護施設で暮らすことになった少女と、捨て犬で施設の一員になったメリーの物語。
フィクションながら、実際にあった話なんじゃないかと思えるほど身近で分かりやすいストーリー。
メリーがきたことで、施設で暮らしている他の子たちや施設で働いてる人たち、そして母親にと、だんだんと心境の変化があらわれきます。
メリーの、言葉にだせなくても気持ちのこもった行動には、犬好きならさらに胸に響くでしょう。




ミステリー 
ソロモンの犬  道尾秀介 文春文庫


犬がかかわって起きた事故の真相を調べていく、という内容なんですが、動物生態学にくわしい助教授が登場して助言していきます。
ここまで犬の行動を中心に置いて、謎解きが続く話も珍しいでしょう。
犬好きな人にとっては、結末はとても深く感じるものがあるかもしれません。




小説 
 はるがいったら  飛鳥井千砂  集英社文庫


両親それぞれが再婚をしたために、別々に暮らしている姉弟の物語です。
姉弟の人間関係が中心の話ですが、そこに、弟の住む実家で飼っている犬14歳のハルが直接はかかわらないのに、少しずつ2人の生活にも影響していきます。
ハルは、もう寝たきりで食事、水、トイレなど日々介護が必要で、自分の部屋に入れて世話をしている弟が、病気入院することになったので、かわりに姉が自分の家に連れていきます。
歩きまわる若いワンコでなく老犬が登場して、しかも介護の様子がとても具体的に描かれているので、むしろ現実的な部分もあって、新鮮でした。
小説すばる新人賞受賞作。




小説    さくら      西加奈子  小学館文庫


白黒ぶちのミックス犬「サクラ」と飼い主一家の物語。
家族それぞれの悲喜こもごもの話中心ですが、そのかたわらには常にサクラがいて、深刻な場面でもマイペースな行動で和ませてくれます。
いいことばかりではなく、むしろかなりつらい事も起きますが、そこにいつもサクラが、犬がいることで救われてきた様子が見事に描かれてます。
家に犬が居ることのすばらしさ、楽しさを再発見させてくれます。




回想記      
南極越冬隊 タロジロの真実    北村泰一  小学館文庫


タロー!ジロー!
映画「南極物語」でのラストシーン、越冬隊員とタロとジロの、1年ぶりの感動の再会シーンは何回観ても泣けます。
この本は、その、再会を果たした唯一の隊員本人だからこそ書けた体験記です。
過酷な環境で、1年の月日を自分たちだけで生き抜かなければならなかった、カラフト犬タロとジロ。
映画での駆け寄っての再会シーン。
実際には、人に対して信頼を取り戻して近づいてくるようになるまで、ずいぶん時間がかかったそうです。
1年間、人のいない世界にいたわけですから、しかたないですよね。
他にも、実はもう1匹生き残り犬がいた、などその当時の知らなかった現場の様子が語られます。
読んでみてもやっぱり「タロ」「ジロ」は奇跡の犬たち、でした。



2014/10/9

ロングドッグバイおすすめ文はこちらロングドッグバイの犬密室って


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