コラム・3
ある裁判


2003年2月17日のニュースで、ある裁判の判決が報じられていました。

79歳の女性が道路を通行中、玄関先から飛び出してきたミニチュアダックスフントに吠えられてびっくりして転倒、足を骨折、入院、4ヵ月後に肺炎により亡くなったそうです。
その後遺族が飼い主に対して起こした裁判で、この肺炎が足を骨折したことによるストレスが影響した可能性が否定できないとして、損害賠償(約660万円)が命じられました。

さらにちょっと前のニュースでは

『公園のサイクリングコースでノーリード(引き紐が付いてない)のゴールデンレトリバーと自転車が衝突、自転車の女性が足を骨折、飼い主に損害賠償(約82万円)が命じられる』
というニュースもありました。
飼い主さんの管理責任に以前よりもかなり厳しい判決が続いています。
裁判は前例が物言う世界ですから、この判決が出たことでさらにこれからも厳しく判決が出るかもしれませんね。

この
ゴールデンと自転車のケースでは、
ノーリードだった点は言い訳も出来ないのですが、「犬が他人を噛んで怪我をさせて・・・」の事故が多い中で、犬が噛んだわけでもタックルしたわけでもなく、ただ自転車の進路にいてぶつかった事故なのが、注目すべき点です。
犬からは自転車の女性に何もしていないし、ただ立っていただけ!
でも事故はおきてしまうんですね。
しかも相手が大怪我するような。
特にこのケースでは、自転車の女性は犬を衝突直前に驚かしたなどの“落ち度”もなかったようです。
本当に偶発的な事故だったといえますね。
街を歩いていれば、ケガまでいかなくても人間同士でも近い事はありえますよね。
この事故自体は不運としかいいようがありませんね。


ダックスと歩行者のケースでは、リードは付いていました(!)。
ところがこれが伸縮リード。
固定しないと伸び放題になってしまう物です。
そしてこの場合、固定して無かった(!)ようです。
『リード(引き紐)が付いていても今回の場合はノーリードと変わらない』と裁判では判断されたわけですね。
それからこのケースの注目は、犬は直接相手に触れていないこと。
ぶつかっても、噛んでもいない。
事故原因は、相手の前に飛び出し吠えたこと。
これだけで相手が大ケガ、後に間接的にとはいえ、亡くなることになってしまったわけです。
犬の大きい、小さい、重い、軽いは、この事故では関係なかった。
急に、歩行者の前に玄関先から犬が飛び出すのを、飼い主が止めなかったことが問題だったわけです。そして今回も転倒した女性に“落ち度”はまったく無し。
さらに転倒によるケガが直接の原因ではないにしても、相手が亡くなってしまったのはつらい事実です。悪い条件が重なった本当に悲しい事故ですね。

この2つのケースはいろいろ考えさせられました。

今回は゛きわめて異例の判決"としてニュースになりましたが、こうした判決が出た以上、これから同じようなトラブルが起きた場合の飼い主さんの責任が、より強くなっていくんでしょう。
事故原因について考えれば、どちらの場合も「飼い主のそばに犬を止めていれば呼び戻していれば、あるいは防げたんじゃないか?」といわれればその通りですし。
起きてしまった事故はもう元に戻らないので、損害賠償が幾らとか判決がどう出た、責任がどっちにある、なんてことはここでは置いておきます。

一番考えなくちゃいけないのは、
小型犬でも、大型犬でも、おとなしい性格でも、激しい性格でも、体重が重くても、軽くても、噛みぐせがあっても、無くても、吠えグセあっても、無くても、人なつっこくても、ケンカ早くても、子犬でも、老犬でも ・・・と犬は様々でも、さらに犬種も全く関係なく、事故はどんな犬でも起こしうることです。

それも、状況によっては相手に大ケガさせることも。
キビシイですが、現実です。

しつけトレーニングに対しての考え方は、人それぞれ価値観が違うと思います。
無関心の人もいるでしょう。
でも最低限のしつけトレーニングは、これからますます必要になっていきそうです。
ぜひ、犬が家族にいる方は、一度自分の犬を冷静に見つめてみてください。


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